あおぞら日記

この日は、ポーランドで一番視察先の多い日でした。

午前中、最初の訪問先、TPD(子どもの友協会)へ行きました。TPDはポーランドで最古の児童福祉のためのNPO組織であり、カトリックの思想の下、古くから養子縁組の担い手を務めてきました。近年、養子縁組については、次に訪れる養子縁組センターなどに業務を委任し、現在は子どもの放課後支援(学校が終わってからの保育・教育活動 休日や長期休暇も)を主に行っているそうです。

TPD講義風景

TPD講義風景

2つ目の視察先、カトリック養子縁組センターでは、ポーランドの里親事情を伺いました。ポーランドにおいても、少子化・晩婚化が進んでいるそうです。それに伴い、養子を希望する人も増えているそうです。こちらの養子縁組センターでは、養子をもらう前の夫婦に適正調査を行ない、養子を迎え入れる前の心構えや、トレーニング(受講証明書の発行)を行ない、養子縁組へつなげます。トレーニングは、赤ちゃんの発達や絢仕方、子どもに何らかの障がいがある場合の対応の仕方や子育てでバーンアウトしないための方法など、具体的で幅広い項目になっています。また、国内だけではなく、国外との養子縁組も行っているそうです。

健康な赤ちゃんとアルコール依存症の母親の下で生まれた赤ちゃんの違いについて説明する際に使う人形

健康な赤ちゃんとアルコール依存症の母親の下で生まれた赤ちゃんの違いについて説明する際に使う人形

飾られていた絵

飾られていた絵

午後は、3つ目の視察先、赤ちゃんポストへ行きました。日本では、コウノトリのゆりかごに似た施設です。ポーランド全土に67箇所あります。こちらもキリスト教系の施設で、赤ちゃんポストの設置以外にも、子どもの放課後支援を行なっています。これまでにこちらの場所での赤ちゃんの保護は2回あり、赤ちゃんが置かれた場合にはすぐに病院へ運べるようなシステムができているとのことでした。

建物遠景 右下が赤ちゃんポスト

建物遠景 右下が赤ちゃんポスト

赤ちゃんポスト

赤ちゃんポスト

講義風景

講義風景

赤ちゃんの寝床の真上に飾られた絵

赤ちゃんの寝床の真上に飾られた絵

最期の視察先、ナシュドム協会は、こちらもコルチャックに関連した施設です。
ナシュドムは、コルチャックが院長を務めていた2ヶ所目の孤児院です。現在も当時の建物を利用して、子どもたちが暮らす児童養護施設の機能を果たしているとのこと。現在は、14名のホームが2つ建物に入っており、それとは別に8名と10名が暮らす場所があります。対象年齢は7~18歳で、平均的な入所期間は3~7年だとのこと。
前に述べたように、ひとつの施設の定員が14名までと法律で定められたため、施設の空いた場所を利用してナシュドム協会が子どものための支援事業を行なっています。ナシュドム協会は、里親への教育や、社会的養護の子どもたちのための奨学金の運営、社会的養護の施設を退所した人たちへの支援を行なっています。

ナシュドム 建物

ナシュドム 建物

コルチャックの頃の写真資料

コルチャックの頃の写真資料

ワルシャワの街は石畳がきれいで、絵になる風景が多かったです。夜の帰り道でもこんな写真が撮れちゃいます。

夜、帰り道

夜、帰り道

午前中にOPS社会福祉センターへ視察へ行きました。
ポーランドの地域の福祉政策の拠点を担う施設でした。
幼児・成人・高齢者と幅広い福祉政策の実務を行なっています。
補助金の支給・貧困対策(子どもへの食事提供や教育支援)・DVへの対応(シェルターやDV認定)・高齢者サービス(買い物の手伝いやデイケア)・関係機関のコンサルテーションなど、福祉全般多岐に渡っています。
児童虐待の対応もこちらで受け付け、子どもたちの保護や保護者への指導を行ないます。

OPS講義風景

OPS講義風景

お昼ご飯は通訳の松本さんお勧めの料理「ピエロギ」を頂くことに。出てきたのが、こちら。
その昔、モンゴルからポーランドへ伝わった餃子だそうです。中身は肉や野菜。それからブルーベリー。味は、…でしたが、インパクトは!!!でした。
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ワルシャワの路面電車

ワルシャワの路面電車

午後からは、WOIK(ワルシャワ危機介入センター)の視察へ。
こちらでは、いろんな危機状態にある人たちへの支援を行なっています。危機にもいろいろあり、DV(家庭内暴力)であったり、住む場所を追われてない状態であったり、大切な人を失った直後であったり、様々です。そのような人たちのニーズに応えられるよう、相談員が相談に乗ったり、シェルター(今回の視察先から離れた場所にあるとのことでした)で住居の提供をしたりしているそうです。
いろんな人の危機状態に早期に介入し、慢性的な精神状態の不全に陥ることを予防することを目的に、積極的に働きかけを行なっているそうです。

WOIK入り口

WOIK入り口

WOIK面接室

WOIK面接室

WOIK講師

WOIK講師

この日の夕食、レストランの廊下に宝箱発見!ドラゴンクエスト世代の団員が発見。
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中を開けると、なんと、掃除道具入れでした。
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いよいよ、研修本番。

現地では、通訳の松本さんにポーランドの児童福祉の現状をいろいろと教えてもらいました。

最初の視察先、コルチャック研究所です。

通訳の松本さん(左)と講師の2人

通訳の松本さん(左)と講師の2人


僕は事前にヤヌシュ・コルチャック関連の施設の担当に当たっていたので、がぜん力が入ります。
コルチャック先生

コルチャック先生


通訳の松本さんのすぐ隣に座らせてもらい、研究所の方が話されるのを一言一句聞き逃さないくらいの気持ちで聞きました。子どもたちが暮らしている施設の中は見せてもらえませんでしたが、ヤヌシュ・コルチャックが孤児院の院長をしていた時代に使われていた建物の中で、講義を聴くことができたのは貴重な経験だったと思います。

ヤヌシュ・コルチャックは、国連が作成した『子どもの権利条約』の基となったポーランド政府からの草案に大きな影響を与えた人です。彼は第2時世界大戦前後に、ポーランドにおいてユダヤ人の孤児院の院長を務めました。ナチスがポーランドに侵攻したのちには、子どもたちと共にユダヤ人居住区(ゲットー)に移動させられ、その後、トレブリンカ絶滅収容所へ送られ、子どもたちと共に最期を迎えました。アンジェイ・ワイダ監督によって映画化された『コルチャック先生』も有名です。

日本と同じく(むしろ、ポーランドの方が先な感じですが)、ポーランドにおいても児童養護施設は大舎制から小舎制になりつつあるようです。コルチャックのころには100人を超える子どもたちが暮らしていましたが、現在は施設の規模は14名までと法律で決められているようです。その分、小さな規模の施設が増えたり、里親がふえたりしているようでした。

お昼は、次の視察までの時間があまりないとのことで、バスでサンドイッチを食べました。

サンドイッチ

サンドイッチ


午後は子どものオンブズマン事務所に行き、オンブズマンその人からお話を聞きました。オンブズマンとは、「代弁者」という意味で、その方が子どもの意見を代弁をする代表をしています。オンブズマンは、事務所内の100名を超えるスタッフに指示をし、国内に子どもの権利侵害がないのかをチェックし、必要であれば意見を述べます。オンブズマンは、国が選任した方であるため、その権限も強いです。
ポーランドのオンブズマン

ポーランドのオンブズマン

その後、ユダヤ人記念館を見学に行きました。ポーランドのユダヤ人の歴史がまとめられていました。この建物のデザイン、すごくないですか?

ユダヤ人記念館POLIN

ユダヤ人記念館POLIN

これは、展示の前半、ユダヤ人の町の絵の中の一部です。この絵のタッチが、おそらくユダヤの伝統的な感じなのだと思うのですが、このポーズ、大阪にいる僕には、あの時の状況にしか見えません。

POLINの中の絵 世界で最初の「なんでやねん」?

POLINの中の絵
世界で最初の「なんでやねん」?

展示の後半は、第2次世界大戦、ユダヤ人への迫害の記録が展示されており、心が揺さぶられました。

その後、旧市街を散策しました。ポーランドの町は第2次世界大戦でほとんどの建物が壊されてなくなりました。その後、残った建物の設計図を用いて、元通りの街並みを再建したのだそう。そういうエピソードにポーランドの人たちの気質が表れているように思いました。

ワルシャワの名前の由来になった人魚像 旧市街にて

ワルシャワの名前の由来になった人魚像 旧市街にて

夜になると、ホテルに帰って、ロビーでその日の視察先の復習と、翌日の視察先の予習をします。

ロビーでのまとめと翌日の予習

ロビーでのまとめと翌日の予習