いよいよ視察の最終日。この頃には、ホテル(朝の確認)→視察先→お昼ご飯→視察先→夕食→団員のまとめと予習→寝る の日課に慣れてきている自分がいました。
この日は午前中、ONE(出生児童事務所)へ行きました。
ONEは、フランス語共同体の母子保健を担う機関です。8日に訪れた子どもの家族庁(オランダ語共同体)のフランス語共同体版です。
その事業は大きく2つに分かれており、1つ目は子どもの家庭環境や保護者を支える仕組み(母子保健・学校での検診・養子縁組・虐待対応)で、2つ目は家庭外保育施設(保育所・乳児院・学童保育・休暇支援施設)の認可と助成です。
今回は母子保健の中核を担う、健診センターへお邪魔しました。
講師は医師と看護師さんたちです。ここでは、子どもの健診と予防接種を行っています。看護師さんたちがチームになって、新生児の家庭訪問から始めています。地域の母親同士の交流(ママ友づくり)のため、ベビーマッサージ教室を開催しています。
虐待などのリスクが高い家庭を見つけた際には、SOS子どもチーム、AGAJと連携をして、対応に当たります。
医師、看護師の方たち、みんな懐が深く、なんでも受け止めてくれる雰囲気です。頼りがいがあり、きっと母親も相談しやすいのだろうと思いました。
子どもを診察する部屋は、明るくて、広くて、いい雰囲気です。
医師の机の周りも、なんだかいいですよね。
部屋に掲示されているポスターは、当然ですがごちゃまぜ。
いろんな人種の人がいるのが当たり前なので、いろんな赤ちゃん、いろんな母親がいます。
そう考えると日本のポスター、もっと多様性を持たせてもいいように思います。
午後からはクレール・ヴァロン小児医療センターへ行きました。
ここは、病院に併設された入所型の治療施設で、敷地内に病院・学校・子どもたちが生活する場所があります。
対象となるのは、0~18歳までの児童で、130名までが入所できます。入所の期間は1年で、最大で2年だそうです。
心理医療部門は、日本でいう児童心理治療施設に似ているように思いました。虐待関連の入所児童の割合が多いのもよく似ています。
副院長先生の講義では、入院時の子どもの評価(アセスメント)と退院時の評価との比較で、どれだけ子どもの発達が促されるのかという結果を教えてもらいました。
院内学級の見学もさせてもらいました。発達面の遅れがある子どもには、感覚統合を促すため、写真のような視覚・触覚に訴える場所が準備されていました。
こちらの教室にもバランスボールがありました。子どもたちが自分で落ち着いて授業が受けられるように工夫できる環境が整えられています。
ここの視察で印象的だったのは、『紙芝居』と漢字で描かれた教材が置かれていたことです。今回の視察先で出会った日本のもの(ピカチュウなどのキャラクターは除く)はこれくらいでした。紙芝居、見直しました。
心理治療も実施しており、こちらではアートセラピーを行っているとのこと。大体週に1回実施。
この時はみんなで仮面作りをしていました。
日本でよくある、プレイセラピーは行われていないみたいでした。
その他の特色としては、肥満児のケアの部門や、マザーベビーユニットという赤ちゃんと母親(時に父親も)一緒に入所して治療を受けるユニットがあることです。
同じ場所で、SAJ(青少年支援局の司法保護サービス)のケースワーカー(デレゲ)の方のお話を伺いました。
ベルギーにはデレゲ総代表という方がおられ、この方がポーランドのオンブズマンのように子どもの代弁者となり、子どもの権利を擁護します。そのデレゲ総代表から権限を委託された人をデレゲと呼ぶそうです。
講師の方も研修を受け、権限を委任され、児童の司法保護に関わっています。本人や家族の同意を取るのが難しいケースに対応されているそうです。効果的な支援のためには、本人や家族の同意を得ることが重要となるため、何とか説得し協力者となってくれるように、日々悩みながら努力されているとのことでした。