あおぞら日記

この日は、午前中にAGAJ(青少年支援局)の視察へ行きました。

AGAJは、フランス語共同体の行政機関で、ワロン・ブリュッセル連合の子どもの家族福祉の予算と施策を担っています。
児童の家庭支援や、児童保護、非行少年への対応、養子縁組の対応などをしています。
ベルギーでは、『予防』をキーワードに、子どもやその家庭へアプローチをしているそうです。
子どもの虐待や非行などの問題が深刻になる前に、地域の繋がりや取り組みで防ごうというものです。
予防のための課があり、そこから地域の子育て支援のための認定サービスが提供されます。地域によって、ニーズが異なるため、それぞれの地域の代表者会議などを開き、その地域に即したサービスが提供できるようにしているそうです。人が集える場所を作るにしても、それをスケートボード場にするのか、遊具のある公園にするのか、体育館にするのか、地域のニーズと目的とを合わせて検討できるという点はすばらしいと思いました。

AGAJ講義風景

AGAJ講義風景

予防の取り組みをした上で、それでも家庭から離れて暮らさなくてはならない子どもについては、本人と保護者の同意を取り、施設や里親などを利用します。同意が取れない場合には、裁判官の判断を仰ぎますが、基本的には家族の同意があって、支援を進めていく(その方が改善しやすいため)方針です。また、ベルギーにおいても、ポーランド同様、子どもは元の家族の下で育てられるべきという原則があり、子どもへの支援も子どもの最善の利益を考えながら可能な限り、その原則に則って行われます。

講義を聴く風景

講義を聴く風景

 

午後からはSOS Enfants(虐待対応チーム)の視察へ向かいました。

僕らが見学したのは、大学病院に付設された虐待対応チームです。
団員は最初に簡単な講義を聞いた後、3つのグループに分けられ、見学・視察をしました。
僕は大学病院の産婦人科内の施設を見学しました。こちらでは、赤ちゃんを産む前の母親が通院、入院をしています。
母親は、心理士や医師と面接をし、出産までの相談や悩みを聴いてもらいます。
胎児期の母体の環境が、乳児に及ぼす影響も考慮されています。
例えば、飲酒をする母親から生まれる子は、低体重児が多かったり、母親が父親と口喧嘩をしていたり、ストレスが多いと、そのことは乳児に直接伝わります。
妊娠・出産の時期に母親(と胎児)を安定した環境に置くことで、出生時の発達の遅れのリスクや出生直後の虐待、また、母親の産後うつへの予防をしているとのことでした。

医師らのケース会議に陪席した団員の話では、取り上げられたケースの母親について、移民のため言葉が話せないようだから、近くの語学スクールへ行けるようにしましょうなど、母子がこの地域で暮らしていくための具体的な対応についても話されていたそうです。

SOS 入り口

SOS 入り口

児童精神科医の講師の先生

児童精神科医の講師の先生

セラピストの講師の先生

セラピストの講師の先生

ポーランド、ベルギー、両国で見かけた乗り物。下の写真の電動キックボードです。LIME(ライム)という名前です。
携帯電話のアプリがあれば、借りることができます。例えば、駅前に置かれているライムで、会社に出勤。ライムにGPSが付いていて、管理会社が回収や充電をするため、好きな場所で乗り、好きな場所で降りられます。
観光客も借りられ、観光の足にできます。スピードは自転車くらいの速さが出ます。
道路も整備されていて、歩行者が歩く部分と、自転車やライムが走る部分とに分けられています。
タクシーを使うよりも安く、排気ガスも出ません。環境への配慮がこういうところにも見えました。

LIME(ライム)

LIME(ライム)

今回の研修で、通訳を務めてくださった栗田さん、実はベルギービールを日本に広めた第1人者なのです。
他にも、若くしてベルギーに渡り、里親をされ、ジャーナリストもされていたり、話題と経験が豊富な方です。この日の研修の夕方、ベルギービールについての講義をしていただきく機会を得ました。
それぞれのビールに合ったグラスがあることや、ベルギーのビールはいろんな色や味があって、アルコール度数もまちまち(中には10度を超えるものもありました)であることなど教えていただきました。
とにかく種類が多いので、団員でいろんな種類を注文し、それを一口ずつ試飲しました(新型コロナウイルス前なので可能でした)。ひとつずつに個性があり、好みも分かれます。ここにも多様性の片鱗が…。日本のビールって、大体同じ色と同じような味ですもんね。

いや、悪口言ってるわけではないんです。…好きです。

通訳の栗田さん、実は日本にベルギービールを広めた第1人者

通訳の栗田さん、実は日本にベルギービールを広めた第1人者

ベルギービール屋さんの棚

ベルギービール屋さんの棚

今回は、幼児さんが描いてくれた絵の紹介。

こちらは、僕の絵を描いてくれました。なかなか上手。
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絵の右の方に書いてあるこちらは何でしょう?分かりますか?
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「これ、なーに?」と尋ねてみたところ、「おっぱい」と返答が返ってきました。
たしかに、こんな形してる。

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ちなみにこれは、下が「たこ」、上が「さかな」とのこと。

一枚の紙の中に、世界が詰め込まれてたんだね。すごいね、子ども。

海外研修も後半に入りました。
この日は、ヨーロッパ全土の行方不明の子どもを捜索するための機関、ミッシングチルドレンヨーロッパの方からお話を聞きました。
この機関、もともとはベルギーで3名の子どもの行方不明事件が起きた際、国によって行方不明児童の対応窓口が異なっており、捜索に手間と時間がかかったという反省から作られたそうです。現在ではヨーロッパ圏内26か国が協力して、行方不明児童の捜索ができるようになりました。具体的には、『116000』という電話番号を圏内共通の電話番号として設定し、ヨーロッパのどこであろうと、その番号にかけるとミッシングチルドレンへ繋がります。
行方不明児童の捜索は、最初の24時間が重要で、その間にどれくらいの範囲に捜索願が伝えられるのかが、カギとなるそうです。

ミッシングチルドレンの担当者

ミッシングチルドレンの担当者

また、行方不明の理由は、家出(58.2%)・親による連れ去り(19.2%)・移動中の行方不明(4.1%)の順に多いです。
親による連れ去りというのは、親の離婚後、一方の親の同意を得ない、他方の親による連れ去りです。
移動中の行方不明というのは、移民・難民の子どもたちの行方不明です。
保護者や社会の事情の中で、行方不明になった子どもたちを、国際的な協力の基に守っていこうという機関があることに感心しました。行方不明の子どもは、犯罪の被害や権利侵害に遭うリスクも高いため、その数を減らすことは子どもたちの権利を守ることにも繋がっています。

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午後からは、ホテルの会議室で、乳児院の職員の方、里親をされている方、元裁判官の方から、ベルギーにおける児童福祉についてのお話を伺いました。

ベルギーの乳児院には、裁判官の判断で親元から離れて暮らす乳児たちがやってくるそうです。
現在は24名の子どもたちを預かっているそうで、基本的には保護者のもとへ返すという方針で関わっているとのこと。
しかし、なかなか保護者の所へ返せる子ばかりではないようです。
24名の乳児院の夜勤職員は現在1名で、子どもに何かあった際には、近くに住む職員と協力して対応されているとのこと。夜間の職員体制の改善が、現在の急務であるとおっしゃっていました。

乳児院の方たち

乳児院の方たち

ベルギーの里親さんからもお話をうかがいました。ポーランドでもそうでしたが、ベルギーでも里親になるための研修を受ける必要があります。その後、子どもとのかかわりが始まり、面会や外出を行ないます。
この里親さんの里子さんは、生後4か月から乳児院にて、里親宅へ繋がるまで1年半を要したそうです。

里親さん(左)

里親さん(左)

元裁判官の方のお話も伺いました。
ベルギーでは、虐待等の危機的な状況の子どもの通告があり、専門機関が子どもの支援計画を子どもや保護者に説明します。
支援計画が施設入所等の場合には、子どもも保護者も反対することがあります。
その際に、検察から裁判官が召喚されます。裁判官は、専門機関の意見、子どもや家族の意見を聴取した上で、子どものためにどのような支援をするのがよいのかの判断をします。その判断は3日以内にされるそうです。
支援の方法について、専門機関と当事者(本人や保護者)の意見が分かれた際に、双方の意見を聞き判断をする裁判官に依頼できます。また、裁判官は当事者が同意しない措置についても、なるべく同意をして協力をするようにと納得させる役割も担っているそうです。

元裁判官(右)

元裁判官(右)

この日は、少し早めに研修が終わったので、ホテルの近くの公園の散策に行きました。
ベルギーは森がとても素晴らしいと同級生から聞いていたので、その一端でも味わえたらと思い出かけました。
市民の憩いの場でもあるようで、ジョギングをしている人や、散歩に来ている親子連れもたくさんいました。
ちょっとした天国みたいな感じでした。

ホテル近くの公園を散策

ホテル近くの公園を散策

池の向こうにレストラン

池の向こうにレストラン

この日の夕焼け。ホテルの部屋(僕らの部屋は10階でした)からの風景。

ホテルの夕焼け

ホテルの夕焼け

この日の夕食。ベルギーの食べ物は、ほぼ間違いなくおいしかったです。
ただ、ここまで毎日となると、白いごはんにお味噌汁が恋しくなります。やっぱり日本人ですね。

夕食

夕食

夜の通りの様子。なんか、ちょっとおしゃれな感じがします。
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