あおぞら日記

海外研修も後半に入りました。
この日は、ヨーロッパ全土の行方不明の子どもを捜索するための機関、ミッシングチルドレンヨーロッパの方からお話を聞きました。
この機関、もともとはベルギーで3名の子どもの行方不明事件が起きた際、国によって行方不明児童の対応窓口が異なっており、捜索に手間と時間がかかったという反省から作られたそうです。現在ではヨーロッパ圏内26か国が協力して、行方不明児童の捜索ができるようになりました。具体的には、『116000』という電話番号を圏内共通の電話番号として設定し、ヨーロッパのどこであろうと、その番号にかけるとミッシングチルドレンへ繋がります。
行方不明児童の捜索は、最初の24時間が重要で、その間にどれくらいの範囲に捜索願が伝えられるのかが、カギとなるそうです。

ミッシングチルドレンの担当者

ミッシングチルドレンの担当者

また、行方不明の理由は、家出(58.2%)・親による連れ去り(19.2%)・移動中の行方不明(4.1%)の順に多いです。
親による連れ去りというのは、親の離婚後、一方の親の同意を得ない、他方の親による連れ去りです。
移動中の行方不明というのは、移民・難民の子どもたちの行方不明です。
保護者や社会の事情の中で、行方不明になった子どもたちを、国際的な協力の基に守っていこうという機関があることに感心しました。行方不明の子どもは、犯罪の被害や権利侵害に遭うリスクも高いため、その数を減らすことは子どもたちの権利を守ることにも繋がっています。

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午後からは、ホテルの会議室で、乳児院の職員の方、里親をされている方、元裁判官の方から、ベルギーにおける児童福祉についてのお話を伺いました。

ベルギーの乳児院には、裁判官の判断で親元から離れて暮らす乳児たちがやってくるそうです。
現在は24名の子どもたちを預かっているそうで、基本的には保護者のもとへ返すという方針で関わっているとのこと。
しかし、なかなか保護者の所へ返せる子ばかりではないようです。
24名の乳児院の夜勤職員は現在1名で、子どもに何かあった際には、近くに住む職員と協力して対応されているとのこと。夜間の職員体制の改善が、現在の急務であるとおっしゃっていました。

乳児院の方たち

乳児院の方たち

ベルギーの里親さんからもお話をうかがいました。ポーランドでもそうでしたが、ベルギーでも里親になるための研修を受ける必要があります。その後、子どもとのかかわりが始まり、面会や外出を行ないます。
この里親さんの里子さんは、生後4か月から乳児院にて、里親宅へ繋がるまで1年半を要したそうです。

里親さん(左)

里親さん(左)

元裁判官の方のお話も伺いました。
ベルギーでは、虐待等の危機的な状況の子どもの通告があり、専門機関が子どもの支援計画を子どもや保護者に説明します。
支援計画が施設入所等の場合には、子どもも保護者も反対することがあります。
その際に、検察から裁判官が召喚されます。裁判官は、専門機関の意見、子どもや家族の意見を聴取した上で、子どものためにどのような支援をするのがよいのかの判断をします。その判断は3日以内にされるそうです。
支援の方法について、専門機関と当事者(本人や保護者)の意見が分かれた際に、双方の意見を聞き判断をする裁判官に依頼できます。また、裁判官は当事者が同意しない措置についても、なるべく同意をして協力をするようにと納得させる役割も担っているそうです。

元裁判官(右)

元裁判官(右)

この日は、少し早めに研修が終わったので、ホテルの近くの公園の散策に行きました。
ベルギーは森がとても素晴らしいと同級生から聞いていたので、その一端でも味わえたらと思い出かけました。
市民の憩いの場でもあるようで、ジョギングをしている人や、散歩に来ている親子連れもたくさんいました。
ちょっとした天国みたいな感じでした。

ホテル近くの公園を散策

ホテル近くの公園を散策

池の向こうにレストラン

池の向こうにレストラン

この日の夕焼け。ホテルの部屋(僕らの部屋は10階でした)からの風景。

ホテルの夕焼け

ホテルの夕焼け

この日の夕食。ベルギーの食べ物は、ほぼ間違いなくおいしかったです。
ただ、ここまで毎日となると、白いごはんにお味噌汁が恋しくなります。やっぱり日本人ですね。

夕食

夕食

夜の通りの様子。なんか、ちょっとおしゃれな感じがします。
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ベルギーの2日目。
今日は、午前中に小学校(幼稚園が併設されています)の見学、午後からは子どもと家族庁への視察へ行きました。

小学校入り口

小学校入り口

校長先生(左)と通訳(右)

校長先生(左)と通訳(右)

小学校の見学では、驚きと発見がいっぱいでした。
その、ひとつ目『いろいろごちゃまぜ』。
教室に座る子どもたち、白人・黒人・黄色人種・またその混血の子たちが、一緒に教室で学んでいます。
また、識字障がいのがある子ども、落ち着きのない多動気味の子ども、発達障がいの子どもも混ざっています。
そして、クラスメイトは、それをその子の個性として受け入れています。そういう感じは、見学した授業の雰囲気や子どもたちのやり取りに表れていました。

小学校クラス風景

小学校クラス風景

小学校クラス風景②

小学校クラス風景②

また、教室に雑音が苦手な子が集中するためのイヤーマフが柱にかけてあり、子どもたちは自由に使えます。
じっとしておくのが苦手な子どもは、バランスボールに座って授業が受けられます。(僕も長時間、じっと座っているのが苦手なため、職場でバランスボールに座って仕事をするようになりました。運動にもなるし、いいですよ)

イヤーマフ 雑音遮断

イヤーマフ 雑音遮断

バランスボールに座って授業

バランスボールに座って授業

そして、言葉。ベルギーはひとつの国の中にフランス語・オランダ語・ドイツ語を話す地域があります。
今回の視察先はフランス語圏だったので、フランス語で話をしていましたが、オランダ語を習っている授業も見学しました。
子どもたちの両親は外国からやってきていることも多いため、子どもたちはその両親の言語も話すことができます。
なので、使える言葉もごちゃまぜなのです。

そして、そうしたごちゃまぜさの中で、自然と育つ中で、自分とは違う他者を尊重しながら、自分も大切にしてもらうということを学んでいきます。
ベルギーだから、そうなった点はあるかとも思いますが、この「周りと自分が違っててもいいんじゃない?自分も大切にしたいし、その分、相手も大切にしないといけないよね」という共通認識はなんだか心地よく、日本にも取り入れられるとよいと思います。日本は周りと違うことを、何かと嫌うところがあるので。

なぜか教室にガスマスク 何かの授業で使ったのかな?

なぜか教室にガスマスク 何かの授業で使ったのかな?

ふたつ目は、『環境保護の意識の高さ』です。
小学校の裏手には、農場があり、ここで子どもたちが野菜を育てているとのこと。
学校の授業の間には、コラシオンというおやつの時間があり、子どもたちは家からおやつを持ってきます。
そのおやつも、日本でよくあるようなプラスチックの個包装されたクッキーやビスケットではなく、タッパーに入れたバナナやリンゴ丸ごと、ドライフルーツだったりします。
出されたごみ(バナナの皮や、リンゴのヘタ)などは、生ごみとして集め、コンポスト(畑に設置された生ゴミ捨て場 日本でも田舎の畑とかにありますよね)で肥料になるのを学びます。

学校の裏の農場

学校の裏の農場

そして、さらに進んでいたのが、トイレ。日本ではもう見ることのなくなった、汲み取り式、いわゆるぼっとん便所です。トイレを終えると、砂をかけて、においを防ぐとのこと。このトイレも、糞尿がたまると先生と高学年が一緒に畑へ運んで肥料にするそう。
ぼっとん便所、一周回って新しいものとなっていました。

トイレ

トイレ

トイレ② 終わるとこの砂をかけてにおいを消します

トイレ② 終わるとこの砂をかけてにおいを消します

教室に飾られていた絵

教室に飾られていた絵

この小学校は特に力を入れているとのことでしたが、今回の視察全体を通して、ヨーロッパの環境問題への取り組みに対しての意欲の高さを感じました。国連のSDGs(継続可能な発展目標)についても、授業で取り上げられていました。

続いて、子どもと家族庁。こちらは、ベルギーのオランダ語共同体の行政機関です。
母子保健、保育、養子縁組、家族手当などの施策をしています。
この機関の特徴は、すべての世帯を対象にして乳幼児の健診(家庭訪問もします)を12回も行っていて、健診に合わせて予防接種が受けられます。母子手帳や育児の方法のリーフレットは、いろんな国の言葉に対応しており、外国からやってきて、周りに知り合いもおらず、資源のない母親と赤ちゃんをちゃんと見つける仕組みができていました。

この日の視察の帰り道、バスでEUの本部前を通りました。
いろんな国の人たちがここに集って、何かを決めていく。
そういう風土が、ベルギーという国には根付いているのだと感じました。

EU本部ビル

EU本部ビル

ベルギーの初日。

ベルギーといえば、やっぱりチョコレートです。
僕は普段から朝食には、トーストにチョコレートを塗ったパンを食べています。
ベルギーのホテルにも、チョコレートのパンがあったので、毎朝、それを食べました。
おいしかったですし、朝のチョコレートがないと、いまいち目覚めない感じもあるので助かりました。

ホテルの朝食

ホテルの朝食

この日の視察先は、アマラージ(青少年援助サービス)と、そこが運営しているコロンビエという児童養護施設、パレナージュ支援団体、アタランテゥという一時保護所です。
児童養護施設は自分の職場でもあるので、どんな所なのか、見学が楽しみでした。

ホテルからのブリュッセルの景色。ベルギーは曇りや雨の日がとても多いらしい

ホテルからのブリュッセルの景色。ベルギーは曇りや雨の日がとても多いらしい

見学先の途中、車中から見えたワーテルローの丘

見学先の途中、車中から見えたワーテルローの丘

最初の視察先では、アマラージの事業内容についての講義を受けました。アマラージでは、3つの児童養護施設(それぞれ定員は15名・15名・18名)、1つの一時保護所(定員は7名)、家庭への集中的介入サービス、非行少年支援を行なっています。
児童養護施設と一時保護所は後で詳しく紹介できるので、ここでは家庭への集中的介入サービスと非行少年支援について、もう少し詳しくお伝えします。

家庭への集中的介入サービスというのは、地域で何らかの危機的な場面にある13~18歳の子どもとその家庭に向けて、関係機関が協議し、家庭訪問を中心とした介入を行うというものです。危機的な場面は、虐待であったり、非行であったり、貧困であったりと様々ですが、子どもを家庭から分離するのではなく、家庭にいながらにして、周囲の支援を整えることで改善を目指すというものです。

非行少年支援の対象者は、15歳以上の罪を犯した若者で、裁判官からの判決を受けて、委託があった子どもが対象です。
内容は、子どもの本人の同意の上で、単身で3か月、地元を離れて長期滞在をします。
滞在先は、ベナン、セネガル、モルダビア、ルーマニア、フランスと、国境を越えています。しかも、大変、田舎。
そこへ着いた子どもたちは、地元の村長や村人たちに受け入れてもらいながら、農作業や土木作業、食事作りなどをします。
それまでとは全く違う環境の中で、参加した子どもたちは自分が生きているという感覚や、周囲の人たちに受け入れられる感覚、自分が役に立てるという自信を得て、戻ってくるそうです。また、3か月の間、地元から離れることで、周囲の非行グループとも物理的な距離が取れることで、再犯をする可能性を減らすという面もあるそうです。
日本では、国外はちょっと考えられないですが、心機一転をして、上のような感覚を得られるプログラムが非行少年の更生に役立つことがあるというのは、実感として湧きました。非行少年でなくとも、何らかの価値観の転換はなされそうです。

続いて、コロンビエです。児童養護施設は、あおぞらと同じ種類の施設なので、見学が楽しみでした。
写真にも載せますが、コロンビエの建物や現場の雰囲気とあおぞらのそれとが、よく似ていました。
なんとなく、いつも働いているような雰囲気があるので、年度末の異動でこちらに配属になっても何とかやれちゃうんじゃないかと錯覚したほどでした。

コロンビエの入り口

コロンビエの入り口

キッチンからは、中庭が臨め、外で子どもたちが遊んでいる様子が見られます。子どもたちを見守りやすいように、死角を減らす設計がなされています。(あおぞらもされてます)

コロンビエのキッチン

コロンビエのキッチン

中庭には、ネコが来てる

中庭には、ネコが来てる

子ども部屋は、1人もしくは2人部屋。適度に片づけがされていながら、生活している感じが素敵でした。

子どもの部屋

子どもの部屋

自転車置き場と倉庫 このごちゃっと感もあおぞらにあります

自転車置き場と倉庫
このごちゃっと感もあおぞらにあります

子どもたちが過ごすリビングにもいろんなものが置かれていました。

色鉛筆いっぱい。これ、あおぞらの幼児部屋みたい

色鉛筆いっぱい。これ、あおぞらの幼児部屋みたい

リビングにあった気になる絵 こういうのも、あおぞらに時々あります

リビングにあった気になる絵 こういうのも、あおぞらに時々あります

不思議なサイコロ

不思議なサイコロ

そして、職員室、施設長さんの部屋。写真では見づらいのですが、たくさんの書類、手紙、付箋のメモがペタペタペタ。職員さんたちの忙しさというのも、垣間見えて、そこもあおぞらと似てました。

施設長さんの机

施設長さんの机

子どもたちには会えませんでしたが、今回は施設内を見学をさせてもらい、自分が今働いている場所と、それほど大きく変わらないことにほっとしました。こういう場所で子どもたちを育てようという営みが、日本を離れてベルギーでも同じように行われていて、そこに携わる職員さんたちがいると知れたことは、これからの僕を温めてくれるような力になると思います。

講義の風景

講義の風景

集合写真

集合写真

午後からはパレナージュ支援団体へ。
パレナージュというのは、名付け親という意味だそう。キリスト教では名づけ親を、父親・母親以外の第3の親として意識しながら、暮らしているそうです。
社会的養護の子どもと、パレナージュ家族を希望する支援者とをつなぐ役割をしている団体が今回の視察先です。
今回の講義では、実際にパレナージュ家族として子どもを迎え入れておられる方から、直接、お話を伺うことができました。
子どもが3歳の頃から、11年に渡り、継続して関わっておられるそうで、現在は毎週末、施設に迎えに行き、自分の家族に迎え入れておられるとのこと。
ご自身の子どもと、迎え入れている子どもとの間の軋轢、成長に従い難しくなってくる関わり方など、生の声を聴くことができました。それでも、これまで通りの関わりを続け、その子どもが成人してからもずっとパレナージュとして 関わり続けたい、もはや自分の子どもの一人という認識をしているとおっしゃられていたのが、印象的でした。
実親との関係を保ちながら、第2の家族を持てるということは、社会的養護の場にいる子どもたちにとって資源となることだと思います。日本の週末里親に似た関わりではありますが、パレナージュという文化的な基盤に基づいていることで、それとは違う趣を与えていました。

パレナージュ家族をされている方

パレナージュ家族をされている方

次は、アタランテゥという、アマラージの運営している一時保護所の見学へ。

こちらの一時保護所は、緊急性の高い子どもたちが、一定期間入所をする施設です。僕らが見学した際には、3名の子どもたちがいました。一人の子どもは、ケアワーカーさんとキッチンで夕食の準備をしていました。あとの2人は、ソファで寛いで過ごしていました。高校生くらいの男の子に、日本から持ってきたマンガ(ドラゴンボール)を渡すと、「おぉ」と喜んでくれました。
ベルギーで日本で人気なものというと、マンガ・アニメ・ポケモン・マリオ・キティちゃん・電化製品だそうです。
一時保護所は場所は公にしていないそうですが、行った場所は割と町中にあります。中庭などもあり、普通の家と変わりません。ただ、外出は基本的にはできず、訪問者も限られるそうです。日本との違いを感じたのは、上述の家庭的な雰囲気と、学校(元いた学校、あるいは施設の近くの学校)に通える点です。

アタランテゥのリビング

アタランテゥのリビング

子どもの部屋 ヒトカゲが置かれてました

子どもの部屋 ヒトカゲが置かれてました

リビングの棚にあった本 性教育のためのもの

リビングの棚にあった本 性教育のためのもの

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リビングにあったマンガ どこの国のかな?

リビングにあったマンガ どこの国のかな?

この日の夜は、世界遺産のグランプラスへ。夜間はライトアップされていて、とてもきれいでした。
僕の高校の同級生が、偶然にもベルギーの方と結婚をして、ブリュッセルで暮らしているので、合流して街を案内してもらいました。
ベルギーのことも全く分からない中で、国の様子や子育てのこと(制度や考え方や諸々)を事前に教えてもらえて、とってもありがたかったです。旦那様は、日本で働いておられたこともあり、とても親日家。日本の文化も好きだと聞いていたので、だんじりのはっぴを持っていきました。
気に入ってくれて、この日の夜ははっぴを羽織って、グランプラス移動。おかげでなかなかレアな写真も撮れました。

グランプラス(夜)

グランプラス(夜)

チョコレート屋さん

チョコレート屋さん

ベルギーで流行っている服のブランド ロゴが漢字で「極度乾燥」

ベルギーで流行っている服のブランド ロゴが漢字で「極度乾燥」

澤町のはっぴとベルギーの街並み

澤町のはっぴとベルギーの街並み